色の世界

毎日勉強です。

一話

須永君は自然に死ぬことを望んでいた。死ぬことがすべての苦しみから逃れる方法であると信じていた。不自由なことはなにもなかった。しかし、なんとなく毎日がつまらない。通勤途中にある長い上りエスカレーターを歩いていると、ふと思う。足を交互に片方ずつ上げるだけの単純作業が永遠に続いたなら、と。何も思考せずただただ足を上げるだけ。そんな世界が存在していたらどれだけ幸せか。でも、エスカレーターは有限だ。登りのエスカレーターは終わりを告げる。また彼にとって、苦痛の時間がやってくる。

須永君の思考はいつもネガティブである。同じところをぐるぐる回る。かと思えば少しずつ下に落ちる。らせん階段である。どんどん下に落ちていく。負のスパイラルに陥るともう一人では抜け出せない。そこで他人の力を借りて何とか抜け出そうと、奮闘するのが彼の愛らしいところである。死ぬ以外にも幸せになる方法はあるはずだ、という希望をひそかに胸に抱いて生きている。この物語は、そんな憎めない彼の愛しい小さな物語である。